元海上自衛隊の落語家「柳家小次郎」氏のご案内

 原宿に、大人が集う隠れ家的空間。

 「クラブ水交」は、会食や懇談だけでなく、小規模コンサート・落語会・文化イベントにもご利用いただけます。

 海上自衛隊OB・水交会会員の皆様は会員価格、一般の方のご利用も歓迎しております。

 今回は元海上自衛隊の落語家「柳家小次郎」氏(現在は二ツ目)の案内です。

柳家小次郎さんは、艦艇勤務を経て柳家さん喬師匠に入門、昨年二つ目に昇進しました。

(第9期一般曹候(横須賀)、第68期一般幹候:斎藤海幕長が候校長の時に入隊、

遠洋航海(練艦隊司令官は泉さん)にも参加しています。)

(ご参考↓)

柳家小次郎(@yanagiya526)さん / X

柳家 小次郎 | 芸人紹介 | 一般社団法人落語協会

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海目の思い出「ラッタル」
~チラシの裏のちょっとした読み物~柳家小次郎

護衛艦に怪談はあるが階段は無い。あるのはラツタルである。もはやノ、
シゴではないかと思う程の急傾斜。だいたい70度くらいの傾斜だ。
護衛艦は案外狭く、普通の階段を設置するスペースが無い。外から見
るとそれなりに大きい護衛艦だが、中で暮らしてみると実に狭い。空間の
大半はエンジン・燃料・弾薬・電子機器などで埋まっており、人間が生活
に使う空間は二の次。生活より戦闘力が優先されるのが護衛艦なのだ。
このラツタル、角度が急なだけでなく、幅も人一人やっと通れる程度。昇
りきった所もハッチになっていてとても狭い。客船では考えられない狭さ
だ。なぜこんなに狭いのか。戦闘で火災や浸水が生じた場合は、ハッチを
閉めて被害を一部分に抑え込む。ここでハッチが大きいと、強度や密閉性
を保つことが難しくなる。それゆえ、護衛艦のハッチは人一人通るのに最
低限の大きさになっている。ここでも生活より戦闘力が優先されている。
ラッタル昇降の基本は三点保持だ。片方の手を後ろに伸ばし、もう片方
の手は前に伸ばし、左右の手すりを軽く握りながら移動する。こうすると、
激しい揺れで前につんのめっても、後ろに尻もちをつきそうになっても踏ん
張りがきく。もっとも、慣れてくれば両手で荷物抱えたまま昇り降り、なんて
こともするのだが、配属されたばかりの頃は三点保持を守っていても、脚
をあげた時、上の段に膝をぶつけたり、昇りきる寸前にハッチの端に頭をぶ
つけたりと、痛い思いをすることが多い。
私自身、初めて護衛艦に着任した瞬間、ラツタルで思い切り滑ってしま
った。護衛艦に着任すると、すぐ艦長に挨拶をするのだが、その挨拶の直
前の失態。真っ白なセーラー服の背中に、ラッタルの滑り止めゴムが擦
れ、真っ黒な跡がついてしまったのだ。身なりに厳しい自衛隊、しかも艦長
への挨拶というハレの場で制服を汚してしまい;大いに焦った。
様子を見ていた副直士官が「艦長には前しか見えないから大丈夫」と
慰めてくれた。実際、士官室への入室と艦長への挨拶は滞りなく進んだ。
しかし挨拶を終え、士官室から出ようとしてハッと気づいた。一般人なら、
お辞儀をしながら背中を見せず、スッと後ずさって退室することもできるが
そこは自衛隊、回れ右でビシッと180度向きを変えてから退室しなければ
ならない。覚悟を決め、回れ右をした。一瞬、時が止まった気がした。怒られ
るかと覚悟した時、艦長が声を出して笑いだした。つられて、見ていた他の
幹部も笑い出し、私は全く怒られることなく士官室を出ることができた。
柳家小次郎